かえるん日記

当たった時は謙虚に。外した時は冷静に。

天才的な書き出しが足りない・夏

山口百恵口裂け女という文章が少し前にツイッターで話題になった。読んでみてほしい。

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まず、山口百恵口裂け女というタイトルの世界観が秀逸だ。山「口」百恵と「口」裂け女で掛けられていて、かつ後半の口裂け女が強烈に引き立つ。山口百恵は時世を表していて、この文章がいつ書かれたものかが一目でわかる。少なくとも私は「読んでみよう」となった。天才的なタイトルだと思う。

中身を見てみよう。

昭和五十四年に佐渡へやって来て話題になった女性が二人おった。

山口百恵口裂け女を女性として対比させることによって、口裂け女がさらに際立つ。二人の女性に対する世間の全く異なるアプローチを「話題になった」とひとまとめにしている点も印象的だ。次の文。

前者は佐和田商工会が招いたものであり、後者は誰も招かないのにやって来たであった。

これも対比なのだが、対比すべき事柄がたくさんある中で「招く」という焦点を使用している点が面白い。そりゃ口裂け女を招いていないのは当然なのだが、これを敢えて山口百恵と対比させることによってより口裂け女の存在感が際立つのだ。そして特筆すべきなのは、山口百恵を「もの」、口裂け女を「女性」と表現している点である。これはこの文だけ見ればかなり不自然な表現なのだが、タイトルと前文があることにより至って自然にこの表現を受け入れてしまう。この時点で我々は、無意識のうちに口裂け女を「女」として強烈に意識してしまったのだ。もうこの文章から引き下がることはできない。

続きが気になるところだが、出典は佐渡の民話 佐和田国仲の伝説と世間話」というものである。読みたい方はお近くの図書館へ。この時期なら避暑にもなるだろう。

この文章に対して、私は「完敗」という言葉を使わざるを得ない。私のブログにもこういう天才的な書き出しが必要なのだ。この「宿題」を片付けなければ、私の夏は終われない。それではまた明日。